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羽(∪_∪)羽”
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カスタマイズに特化したブラウザ Sleipnir。上級者のために。
クリスマスのレストランにて
ま、間に合った~。

ということで、めめんさんの「All You Need Is Love & Peace.」にTrackBack!



Title : クリスマスのレストランにて


「あの...オーナー...宜しいですか?」

固い表情で新入りのウェイターがオーナーを呼び止めた時、まさに厨房は戦場の状態だった。

「なんだね?今日はクリスマスメニューの対応で普段よりも忙しい、って事は入ったばかりの君でも分かるだろう?手短に頼むよ。」

初老の経営者は少しピリピリとした態度で応えた。

「はい、実は12番テーブルのお客様なのですが...。」

「12番?」

オーナーはカーテンを少しめくり、窓際奥の席を確認した。
大通りに面した、このレストランでも最上のテーブルの一つだ。

1秒ほど客を凝視したあと、オーナーはつぶやいた。

「ほう。ご到着か。」

「えっ?」

ウェイターにはオーナーの反応が意外だったのか、キョトンとした表情で雇い主を見返した。
オーナーは、何故か笑みを浮かべていたのだ。

「うむ。大切なお客様だ。粗相の無いように、な。」

ぽん、と叩かれた肩をウェイターは暫し見つめた後、ようやく言葉が出て来た。

「しかし、あのお客様は...」

「何か問題でもあるかね?」

「一応、正装とは言えるかもしれませんが、どう見ても...」

客は、儀礼用の軍服を身にまとっていた。

相当にくたびれた、ぼろぼろの。

胸元には本物なのか、おもちゃなのか、不自然に大量の勲章がへばりついている。
帽子掛けのシルクハットも、大仰な羽根飾りを取り付けているだけでも妙なのに、形が無惨に崩れてしまっており、派手さの割に大変にみすぼらしい印象がある。

「そうだな。」

ウェイターの言いたいことを汲んで、オーナーが返した。

「それに、食事のお代を頂けそうな方には...」

スキッパー(食い逃げ)、とは言えないでも、この様子では相当の金を身につけているようには見えない。

「そうだな。」

2度、同じ答えを返された。

客は先ほどから、威厳のある『ふり』をしているのか、奇妙に背をそっくり返らせ、周囲を見渡している。
しかし、それが全く板に付いておらず、場末の劇場の、喜劇役者の仕草の様にさえ見える。
それを再度目の脇で捉えたあと、ウェイターはオーナーへとどめの問いを発した。

「それはつまり、その、このレストランにふさわしいお客様では無い、かと。」

「そうだな。」

水面に槍を突き刺すような手応えの無い答えに、ウェイターは困惑した。
このような客には丁重な態度でお取り引き頂くべきなのだ。
そうではないかと、オーナーに確認しようとしたその時だった。

「お!来なすったか。これは腕によりをかけんとな!」

厨房の奥から料理長が明るく声をかけてきた。
どういうわけか、料理長もまた、オーナーと同じようにニヤニヤと笑っている。

オーナーが大切な客と呼び、料理長が腕によりをかけるという、しかしこの場に全くふさわしくない客。
彼は一体どういう人物なのか?

「あの...あのお客様は、どういったご関係の?」

「そうだな、あれこそ、我がアメリカの誇る...」

「イカれたおっさんだ!」

オーナーの答えを遮って、料理長が口を挟んだ。
だが、オーナーもそれをとがめず、笑みを浮かべている。

「けどな。俺はあのおっさん、大好きだぜ。」

料理長はそれだけ言うと、またキッチンの方へと振り返り、コック達に指示を出し始めた。

「イカれた?...おっさん???」

ウェイターは誰に聞くでもなく、つぶやいた。

「新入り君はこのサンフランシスコに来て間が無いんだったな。まあ、後でじっくりと教えてやるとも。

だがな、今はこれだけ心して覚えておきたまえ。

金と呼べるようなものは、何も無い。

人として尊敬できるか、と言うとそうでもない。

にも関わらず、大きな宝物を持っている人物ってものが、希にだが世の中には居たりするもんだ。

さ、わかったら仕事を続けたまえ。お客様方も待ちに待ったクリスマスの夜なんだからな!」


オーナーの言った"宝物"が具体的に何を指しているのかは、分からない。
ただ、若いウェイターも、何かそのようなものを12番テーブルの客が持っていると感じ始めていた。

つい先ほどまでピリピリしていたバックヤードの雰囲気が、客の登場によって和らぎ、他の客達にもより和やかな笑顔が広がって行ったのだ。



その、小さな奇跡を起こした客の名は、ジョシュア・エイブラハム・ノートン。

別名ノートン一世。

建国以来民主共和制を貫いているアメリカでは存在しない地位に就く、合衆国皇帝 その人であった。


( ¨)ノ―――――――◎゛ テンプレ ( ¨)ノ―――――――◎゛

クリスマス童話企画
ジングル・ベル・ノベルパーティ

作品は特に童話でなくてもかまいません
短歌でも、絵でも、なんでもOK

星降るクリスマスとなるか
雪のホワイトクリスマスとなるか
いずれにせよ
心温まる”ものがたり”を
あなたのブログでアップしてください

企画元: COCOROZASI.NET & All need is love & Pease
トラバ先: [ http://memen.exblog.jp/17006169/ ]

( ¨)ノ―――――――◎゛ テンプレ ( ¨)ノ―――――――◎゛


今回のお話は実在の人物を元にしたフィクションです。
ってことで、ノートン一世についてはこちらを参照下さい。

しかしまあ、マーク・トウェインがノートン一世の犬の墓碑に捧げた言葉ってのがまた素晴らしいね。

年月を重ね

名誉を重ね

病を重ね

そしてシラミを重ねた


ユーモアと愛が溢れてます。


それではみなさま、Merry Christmas!



Written by ぢぇみに

by jemini-web | 2012-12-24 23:35 | ▼ TrackBackIvent | Comments(2)
Commented by itchys at 2012-12-25 23:33
くっ、こんな企画が行われていたとはっ! もう酔っぱらっちゃってるし時間もないのでトラックバックできない(って、トラックバックの方法さえ半分忘れかけてる)けど、ぢぇみにさんの文章、笑わせてもらいました。

Wikipediaで見てると、ノートン一世さん、なかなかのイイキャラですね。 ペルー米って (苦笑)。

っと、メリー・クリスマス!
Commented by jemini-web at 2012-12-28 23:58
▽ itchysさん:
> トラックバックの方法さえ半分忘れかけてる)
あう。この記事のTrackBackも反映されてませんね。
方法を忘れたのは、おいらの方かも...まあ、そんな事もアル・カポネ(1932年 アルカトラズ収監)

ノートンさんは、日本で言えば 仙台四郎 さんに近い人物になるんでしょうかね?いや、ちょっと違うか。
でも、タロットカードで言えば何故か「皇帝」よりも「愚者」に例えられるんでしょうね。犬連れてるし。
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